「夢を跳ぶ」(佐藤真海)

人はこれだけ強く生きることができる

「夢を跳ぶ」
(佐藤真海)岩波ジュニア新書

東京オリンピック・パラリンピック
開幕まであと1年を切りました。
来年が待ち遠しいという気持ちで
いっぱいです。
さて、みなさんは
2013年のIOC総会での
佐藤真海さんのスピーチを
覚えていらっしゃいますか?
「私がここにいるのは、
スポーツによって救われたからです」
から始まるスピーチは、
爽やかで明るい笑顔とともに、
世界中の人々の心を動かしました。

私はその5年ほど前に
本書が出版されたとき、
この一冊を店頭で見かけ、
表紙から微笑みかける真海さんの美貌、
いや笑顔に魅了され、速攻で
レジに持って行ってしまいました。
読んでさらに満足。
こんな素晴らしい本があったとは。

さて、本書ですが、
彼女が北京パラリンピックの
代表として選ばれ、
実戦に向けて励んでいく姿までが
書かれています。
19歳で骨肉腫を発症し、
右足膝下を切断。
運動好きの若い女性が片足を失う。
そのショックはさぞかし
大きかったものと推察できます。
しかし、本書でそうした絶望感が
描かれているのはほんの僅かです。
全編を貫いているのは
どこまでも明るく、ポジティブで、
挑戦しようとする
前向きな希望なのです。

すでに枯れ始めているおじさんは、
こうした若い人の
真摯な生き方にふれると、
それだけでエネルギーを
いただいたような気に
なってしまいます。

最近、教育現場で中学生を見ていて、
気がかりなことがあります。
近頃の子どもたちは立派です。
特に話すことは。
いろいろな場面で
前向きな発言をします。
「…ことを頑張ります。」
「…全力で取り組みます。」
でも、その後の行動を見ると、
全然頑張っていないのではと
感じることが多々あります。
子どもたちは小さな困難があると
すぐ諦めます。
そして自分が諦めたのは
「まわりが悪い」からと、
自分以外のものに原因を求めます。
中には自分が「諦めた」ことに
気付かない子どももいる始末です。

「頑張るってこんなことだよ」
「全力で取り組むってこんなことだよ」
「まわりの環境が自分にとって
どんなに過酷でも、人はこれだけ
強く生きることができるんだよ」。
それを子どもたちに教えることのできる
素敵な本だと思います。
中学校1年生に
ぜひ読んで欲しい一冊です。

佐藤真海さん、いや、
結婚されて今は谷真海さん、
4度目のパラリンピック出場を目指して
これからも活躍してください。

(2019.8.20)

かっちゃんさんによる写真ACからの写真

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA